
恐るべき映画の誕生である。本作によって、西川美和監督はその突出した演出力を世に知らしめ、日本映画のトップランナーのひとりとして躍り出ることはもはや間違いないだろう。1組の兄弟がいる。風貌も性格も対照的な兄弟。東京でカメラマンとして活躍する弟と、田舎で家業を手伝う兄。久しぶりに帰郷した弟は、ひとりの女性の転落死をきっかけに、兄と対峙することになる。兄は容疑者、弟は目撃者。はたして兄は女を殺したか否か。映画は、事件の行方を追いながら、この兄弟の「真実」をあぶりだしていく。
卓越した法廷劇としてのミステリーを軸に抱えながら、ありきたりな確執や葛藤に封じ込めることのできない人間と人間との根源的な関係性そのものにメスを入れるその筆致。運命に翻弄されるというより、宿命に「試される」ふたりの姿を見つめるまなざしは、神話的と言ってもいいほど雄大で、そして深い。王道の映画としての風格を放ちながらも、微細なリアルをとことん追求したその描写は、男たちの硬質な色気を画面のいたるところに定着させ、みなぎる映画的緊張感は一瞬も弛緩することがない。
タイトルは、事件の舞台となる山のつり橋の動きからきている。人間はゆれる。絆はゆれる。魂はゆれる。記憶はゆれる。万物の決定的普遍を、鮮やかにもぎとったこの作品に出逢うとき、私たちの心もゆれる。