
昨年の『タッチ』に続き、再び長澤まさみ主演であだち充の名作漫画が映画化された。アイドル映画としてのみずみずしさ、青春映画ならではの息吹きは、前作以上に繊細に融合している。その、てらいのなさ。野心を抱えない無垢でひたむきな作品の肌触りは、見る人誰もを“あの日、あのとき”の自分自身に立ち会わせることになるだろう。
男の子目線で紡がれる女の子への想い。あだち漫画の精神性をキープしながら、映像ならではのトピックは語り部たる少年に、いまをときめく速水もこみちを起用していること。競泳という勝負の世界に生きながら、全力を出し切ることの覚悟がいまひとつ決まらない、ちょっぴり意気地なしの高校生を、長身でイケメンの速水が演じる意表は、逆に映画全体に普遍を行き渡らせる。ヒロインの心を揺らすもうひとりの少年、これがまたエリートでありながら心身ともに健やかな誇り高きアスリートで、文字通りの好敵手たりえている(『大停電の夜に』の阿部力が絶品!)。
太陽と月ほどに対照的なふたりを前にして、それぞれの“光”を浴びて輝く長澤まさみは、いよいよ映画女優としてのオーラが本物になってきた。戸惑い、不安、自信のなさ……青春期に特有の負の感情を吐き出すのではなく、ぎゅっと抱きしめるような演技がここにはある。女性映画の旗手である大谷健太郎監督のまなざしも、そここそをすくいとっている。