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『それでもボクはやってない』について語り合いました
2006年12月21日(木) スペース汐留(東京・新橋) ゲスト:周防正行監督
Evolution J film

 『Shall we ダンス?』の周防正行監督の11年ぶりの新作『それでもボクはやってない』は、これまでのコメディ路線とはガラリと趣を変えた社会派エンタテインメント。監督がこの作品で問いただすのは、日本の刑事裁判の奇妙で怖い現実。この日のトークも、いつものような映画の作り方の話とは違い、裁判や法律についての解説大会に。観客の質問に熱く答える監督が印象的でした。


「多くの冤罪は、(裁判の)システムを変えれば絶対になくなると思う」

Q:その方面からの圧力はなかったですか?
周防:まだ、ないです(笑)。今回取材を受けていても「勇気ありますよね」って言われたりするけど、そこまで考えてなかったというのが正直なところ。気がついたら、黙っていられなくて作っちゃったという感じなんです。ただ、確かにこれは僕が見た裁判ですけど、やっぱりそれは傍聴席から見た裁判なんです。で、事件の背景をまったく知らずに傍聴すると、ほとんどの事件が有罪以外にはないって思える。こういうふうに見えちゃうことだけは事実です。それと、200回以上傍聴を重ねた僕が、怒りを覚えるぐらい、裁判官は本当に被告人の声を聞かないし、不公平に見えるんです。いくら公平にやっていると言っても、傍聴している人間から不公平に見える裁判はよくないと思うんです。本当に公平なら、公平に見えるようにしなきゃいけない。でも、それは絶対にやってないです。そこを裁判官は考えて欲しい。これだけは、どんな戦いになっても僕は唯一言えますね。
Q:やっていないのに有罪が決まって落ち込んでいる人に、監督はどういう言葉をかけますか?
周防:なぜ僕が、刑事裁判の姿を使命感のように見せたいと思ったかというと、そういう当事者の方たちにたくさん会ったからなんですね。彼らの話を聞くと、やっぱり不公平感があるわけですよ。でも、僕がそういう方に声をかけるとしたら、「国があなたを有罪だと認定してるけど、あなたのことを信じている人はいる。そのことを力にして生きていってください」そうとしか言えないですね。
Q:法律は人間が作ったもので裁くのも人間です。その中で公正な裁判はできると思いますか?
周防:僕がこの映画でいちばん言いたかったのは、多くの冤罪は、(裁判の)システムを変えることによって絶対になくなるということ。そういう確信を持ったし、冤罪が起きないように、システムをいいものに変えていく努力をしていくべきだと思ったんです。どんなに苦しくても、人が人を裁かなければいけない。だからこそ、そのためのいいシステムを作っていくしかないと思っています。

『それでもボクはやってない』は、
1月20日(土)より、シャンテ シネほかにて公開
司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介
ポスター

“裁判オタク”と化した監督が放つ新しい法廷エンタテインメント
 周防正行といえば、学生相撲の世界を描いた出世作『シコふんじゃった。』や、社交ダンスブームを巻き起こし、ハリウッド・リメイクもされた大ヒット作『Shall we ダンス?』など、ウェルメイドなコメディを生み出してきた監督だ。
 ユニークな題材を料理してきた周防監督が11年ぶりに発表した最新作『それでもボクはやってない』のモチーフは、ズバリ“日本の裁判”。痴漢冤罪に関する新聞記事を読み、「疑わしきは罰せよ」の現状に疑問を抱いた日から約3年。徹底的なリサーチを重ねて“裁判オタク”と化した周防監督がその知識のすべてを注ぎ込み、まったく新しい法廷エンタテインメントを生み出した。
 通勤電車で痴漢に間違えられた青年を演じるのは、あくまで“普通”なたたずまいと生っぽい表情が、問題をより身近に感じさせる加瀬亮。観る者が裁判に関するあらゆるトリビアを他人事やお勉強モードではなく、リアルな問題として追体験するために彼が果たした役割は大きい。
 ハリウッドの法廷もののようにドラマチックな演出にたやすく逃げる事無く、裁判の入口から出口までを誠実に描写することで2時間23分を一気呵成に見せ切る斬新な社会派映画を完成させた周防監督。だからこそこの作品は、観客ひとりひとりが、“日本の裁判”を“自分の裁判”として受けとめ、考えるための最良のテキストになるはずだ。
text:細谷美香

周防監督が投げかけた
日本の裁判に対する疑問
二審で逆転無罪を勝ち取った痴漢事件のリサーチを重ねるうち、「被告人がどう闘ったか」よりも、日本の裁判制度のあり方についての疑問を抱くようになったという周防監督。なぜ「疑わしきは罰せず」の理想が崩れさってしまうのか、監督の検証と考察のすべてがここに! 2009年にはじまる裁判員制度を前に、いま観るべき映画だ。

監督・脚本:周防正行 製作:亀山千広 出演:加瀬亮/瀬戸朝香/山本耕史/もたいまさこ/役所広司
配給:東宝 上映時間:2時間23分 1月20日(土)より、シャンテ シネほかにて公開


周防正行監督
Profile
1956年生まれ。'84年『変態家族・兄貴の嫁さん』で監督デビュー。以降、'89年の『ファンシイダンス』'92年の『シコふんじゃった。』と作品ごとに評価が高まり、'96年の『Shall we ダンス?』はハリウッド・リメイクもされた。
Message
普段の生活の中で、僕が驚き興味を持ったことを皆に伝えたい、というのが映画を発想する出発点です。今回は、痴漢冤罪事件の逆転無罪を伝える新聞記事に興味を持ったことが発端でした。しかし、取材を進めるうちに冤罪を生み出した裁判のあり方そのものについて多くの疑問がわいてきました。日本の刑事裁判について今一度考えてみたい。そう思ってこの映画を作りました。
©2006‐2007フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/東宝
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