
家族が食卓を囲む。絵に描いたような幸せな光景だ。しかし、中原家の場合はちょっと複雑。中学3年生になった佐和子が始業式を迎える朝、父が食卓で口にしたのは「父さんを辞めようと思う」という言葉だった。3年前から家を出て近くのアパートに暮らす母、伝説の天才と呼ばれながらも進学せず農業を始めた兄。どこか歪みはじめた家族をなんとか受け入れようとする佐和子だが、そんなとき彼女の大きな支えとなる人物、転校生の大浦くんが現れた……。
注目の作家、瀬尾まいこの小説を映画化したのは、TVドラマ『結婚できない男』のコミカルな演出が記憶に新しい小松隆志。『ワイルド・フラワーズ』や『奇談〈きだん〉』などアクションやホラーも手がける監督が、「人間のちょっとした可笑しさや悲しみをサラリと表現できる」とプロデューサーが太鼓判を押すその手腕を存分に発揮し、人間の生、家族の絆を見つめた珠玉の物語を紡ぎだした。
家族の問題、初めての恋、突然の悲劇……どんな状況にもまっすぐに向き合う佐和子の存在が、壊れかけた家族を大きく変化させていく。映画初主演にして、この重要な役柄を演じきった北乃きいは、映画界に新星誕生のうれしい予感だ。
人が人を想うことで生まれる繋がりは強く、温かい。エンディング曲、Mr.Childrenの『くるみ』が聞こえる頃には、大切な人のことを思い出さずにはいられなくなるだろう。