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『幸福な食卓』について語り合いました
2007年1月24日(水) 東京国際フォーラムD1ホール(有楽町) ゲスト:小松隆志監督
Evolution J film

 第26回吉川英治新人文学賞に輝く瀬尾まいこの同名小説の映画化『幸福な食卓』は、一見平穏そうな家族の崩壊と再生を思春期の少女の視線で描いた青春ストーリー。小松隆志監督を迎えたこの日のトークでは、原作ファンの絶賛コメントから、小説を映画に変換する際の監督の演出プラン、作品のテーマに至る様々な感想や質問が飛び交い、充実したひとときになりました。


「表層的なものを観ていくと、裏が透けてくるように作ったんです」

Q:小説の映画化は裏切られることが多いんですけど、これはイメージ通りですごく感動しました。大浦くん(勝地涼)の憎めない感じや佐和子(北乃きい)の頼りないけど、凛々しいところもすごく表現できていて本当によかったです。
小松:キャストはプロデューサーの小滝(祥平)さんが原作からイメージして選ばれたんですよ。
Q:監督の中では、原作のどういう部分を大事に映画化しようと考えられていたんですか?
小松:原作は、料理の話などの表層的な描写が多くて、お父さんが自殺しようとした理由や、(ひとり暮らしを始めた)お母さんの心情は裏に隠されてるんです。だから映画でも、死ぬところを描かないで死を描けないだろうか? とか、家族が少し壊れてる感じを食事のシーンで描けないかな? と思って。表層的なものを観ていくと裏が透けてくるように作ったつもりなんです。
Q:私は、保護司として、少し道を外れてしまった若者と付き合うことが多いので、佐和子のように、酷い目に遭っても素直で、立ち直れる強い精神力を持った若者を見て少し安心しました。
小松:あの中川家は佐和子がかすがいになってると思うんですけど、小林ヨシコ(さくら)の存在がなかったら、彼女はたぶんグレちゃったと思うんですよ。で、佐和子がグレたら、あの家族はバラバラに生きていったと思うんですね。その意味では、親には言えないことも話せる第三者が必要で。そういう人の存在がいかに大事かって、前から真剣に思ってるんですよね。
Q:ああいう本音で言える人が身近にいてくれると、現代の若者ももう少し生き易いですよね。
小松:そうですね。ただ、いまは教師にあの役は期待できないから。そうなった場合、ヨシコのような兄貴の恋人とかには言い易いと思うので、そこにも気づいて欲しいですね。逆に主人公たちより上の世代の人たちには、自分がヨシコの役割を担えることにも気づいて欲しい。たぶんヨシコにも(何でも話せる)その役割の人がいると思うし、そういったことがいい形で連鎖するといいですね。

『幸福な食卓』東劇ほかにて上映中 司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介
ポスター

人間のちょっとした可笑しさや悲しみをサラリと表現
 家族が食卓を囲む。絵に描いたような幸せな光景だ。しかし、中原家の場合はちょっと複雑。中学3年生になった佐和子が始業式を迎える朝、父が食卓で口にしたのは「父さんを辞めようと思う」という言葉だった。3年前から家を出て近くのアパートに暮らす母、伝説の天才と呼ばれながらも進学せず農業を始めた兄。どこか歪みはじめた家族をなんとか受け入れようとする佐和子だが、そんなとき彼女の大きな支えとなる人物、転校生の大浦くんが現れた……。
 注目の作家、瀬尾まいこの小説を映画化したのは、TVドラマ『結婚できない男』のコミカルな演出が記憶に新しい小松隆志。『ワイルド・フラワーズ』や『奇談〈きだん〉』などアクションやホラーも手がける監督が、「人間のちょっとした可笑しさや悲しみをサラリと表現できる」とプロデューサーが太鼓判を押すその手腕を存分に発揮し、人間の生、家族の絆を見つめた珠玉の物語を紡ぎだした。
 家族の問題、初めての恋、突然の悲劇……どんな状況にもまっすぐに向き合う佐和子の存在が、壊れかけた家族を大きく変化させていく。映画初主演にして、この重要な役柄を演じきった北乃きいは、映画界に新星誕生のうれしい予感だ。
 人が人を想うことで生まれる繋がりは強く、温かい。エンディング曲、Mr.Childrenの『くるみ』が聞こえる頃には、大切な人のことを思い出さずにはいられなくなるだろう。
text:竹岡智代

新進女優北乃きいの
みずみずしい演技
オーディションにより佐和子役に抜擢されたのは、“ミスマガジン2005”グランプリの北乃きい。映画初主演というプレッシャーを感じさせないみずみずしい演技で、家族の問題を受け入れつつも素直に甘えを出せない弱さ、初めての恋に弾む純粋さや悲劇を受け入れる強さなど、佐和子像を見事に抽出させている。今後が期待できる彼女に要注目!

監督:小松隆志 原作:瀬尾まいこ 音楽:小林武史 出演:北乃きい/勝地涼/平岡祐太/さくら/羽場裕一/石田ゆり子
配給:松竹 上映時間:1時間48分 1月27日(土)より、東劇ほかにて公開


小松隆志監督
Profile
1962年生まれ。'86年“ぴあフィルムフェスティバル”で入賞後、『はいすくーる仁義』('91)で劇場用映画監督デビュー。代表作に『仮面学園』('00)など。最近ではTVドラマ『結婚できない男』のユニークで斬新な演出が話題に。
Message
もう一度、“家族とは何か?”ということを考えてみようというのが、この映画のテーマでした。また、成長するのは子供ばかりではなく、大人も、そしてまたT家族U自体も成長していくんだということを、描こうと思いました。この映画を御覧になって、観客の皆さんがそれぞれに、T家族Uについて考え直していただけたら幸いです。
©「幸福な食卓」ASSOCIATES
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