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『さくらん』について語り合いました
2007年2月22日(木) スペースFS汐留(東京・新橋) ゲスト:蜷川実花監督
Evolution J film

 安野モヨコの同名人気コミックを、人気写真家の蜷川実花が極彩色の時代絵巻として映画化した『さくらん』。映画は彼女の写真と同様の原色を基調とした艶やかな色彩と、既存の花魁映画や時代劇とはまるで違う独自の世界観で、吉原の遊郭に売られたひとりの遊女がたくましく生きていく姿を描き出す。この日のトークでは、そんな蜷川実花のこだわりの秘密を聞くことができました。


「浮世絵にあることならやってよし! というルールを決めたんです(笑)」

Q:絢爛豪華な江戸の吉原を丁寧に描いてましたが、時代考証などはされていたんでしょうか?
蜷川:Amazonで買える吉原に関する本は全部買って読んだんですけど、浮世絵もたくさん見てて、浮世絵に描いてあることならやってよし! っていうルールを一応決めて入りました。ただ、大門の金魚だけは大嘘(笑)。それ以外は当時あり得たんじゃないかな?ってことをやってるつもりです。
Q:金魚以外は当時なかったものは作ってない?
蜷川:意味があればいいけど、私は悪戯にビックリさせようって気がなくて。例えば『さくらん』のすごい緑色の畳も浮世絵が真緑だから緑で良しってことなんです。でも、だからといってピンクの畳は出さない。何故なら浮世絵にないからです。
Q:まっとうですよね。
蜷川:菅野美穂さんが花魁道中している時にシャボン玉がいっぱい出て来たと思うんですけど、あれも江戸の職業にシャボン玉売りがあったから、じゃあ、シャボン玉道中にしようって(笑)。
Q:逆に、既存の時代劇は、実は意外に当時あったかもしれないものをあまり描いてないんですね。
蜷川:そうですね。それは調べていてすごく思いましたね。あと、ラッキーだったのは遊郭の中の話だったこと。これが江戸の町を描くんだったらあんなに自分の好みを入れられなかったと思うんですけど、個人のお店の中の話だったので、結構いろんなことが出来たんですよね。ステンドグラスみたいな障子も、当時、色のついた和紙があったので、それを貼ろうぜ! って言ってやりました。
Q:(表現の)可能性はいっぱいありますよね。
蜷川:私がいちばんこだわったのは遊女の描き方なんです。みんな楽しそうにしてたと思うんですけど、そういう浮世絵が残ってるんですよ。これまでは女同士の戦いや女の業がクローズアップされてたけど、浮世絵には、お客さんからの手紙を読んでる遊女を他の遊女が覗き込んでキャッキャしてたり、1冊の本をお煎餅を食べながらみんなで回し読みしてたり、楽しそうな絵がいっぱいあって。そこはちゃんと描きたいと思いましたね。

『さくらん』シネクイントほかにて上映中 司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介
ポスター

遊郭に生きる女たちの剥き出しの生き様をストレートに表現
 見上げれば吉原の大門にはひらひらと金魚が泳ぎ、鮮やかな緑色の畳に真っ赤な壁、床の間には洋花。ゼブラ柄の帯をだらりと締めた花魁たちが、しゃぼん玉の舞う江戸の街をゆっくりと歩いていく。思わず息を飲んでしまうようなこんなアバンギャルドな遊郭を、はじめて見た。
 監督はすでにフォトグラファーとして自らの世界観を確立し、女の子を中心に絶大な支持を得ている蜷川実花。彼女は長編初監督作『さくらん』において、一度観たら決して忘れることの出来ない中毒性のある“蜷川ワールド”のビジュアルの魅力を、そのままスクリーンに移植することに成功しているのだ。
 しかも蜷川実花は、これまで映画のなかで女たちががんじがらめになる場所であった遊郭を、ヒロインがもがきながらも自分の足ですっくと立って生きようとする場所として描いた。惚れるも地獄、惚れられるも地獄、ここには本気の恋があり、覚悟があり、痛みがある。 『さくらん』にあふれているのは、蜷川実花だけが生み出すことのできる甘い毒を含んだヴィヴィッドな色彩感覚と、土屋アンナをはじめとする女たちの剥き出しのエモーションを一瞬たりとも見逃すまいとする、まっすぐなまなざしだ。にぎやかなおしゃべりから浮かび上がってくる、ずるさと純情、図々しさと健気さ。そのすべてが、今を生きる女の子たちと同じ体温をもって迫ってくる。
text:細谷美香

女性アーティストたちの
コラボレーションに注目!
原作者である安野モヨコはもちろんのこと、『さくらん』には時代の先頭を走り続けている女性クリエイターのパワーがみなぎっている。脚本は監督最新作『赤い文化住宅の初子』の公開にも期待が集まるタナダユキ。はじめて映画音楽を手がけた椎名林檎によるグラマラスなメロディの数々が、まったく新しい時代劇を生み出した。

監督:蜷川実花 原作:安野モヨコ 音楽:椎名林檎 出演:土屋アンナ/安藤政信/椎名桔平/成宮寛貴/
木村佳乃/菅野美穂 配給:アスミック・エース 上映時間:1時間51分 2月24日(土)より、シネクイントほか


蜷川実花監督
Profile
1972年、東京都生まれ。'96年に「写真ひとつぼ展」グランプリを受賞し、以降、雑誌や広告など幅広い分野で活躍。「木村伊兵衛写真賞」も受賞し、昨年手がけた『永遠の花』(小学館)など、これまでに30冊以上の写真集を発表。
Message
どうやら私の人生は、すべてここに向かう為に進んで来たみたいです。『さくらん』を撮るためには、「蜷川実花」全部の経験値が必要でした。初監督、異業種の私だからこそ出来ること、最後まで信じきること、このふたつだけ守り通せれば大丈夫だと思い駆け抜けました。観てくださる皆様がこの作品を愛してくださったら、こんな幸せなことはありません。
©2007 蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ
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