
本屋大賞受賞も、かなり過去の出来事のよう。名匠、久世光彦が“最後の作品”として手がけた単発スペシャルドラマ、そして現在放映中の速水もこみち主演の連続ドラマ。もはや日本中で知らぬ者がいなくなりそうな勢いの一大ベストセラーが、いよいよ映画版として登場する。
リリー・フランキーの限りなく自伝に近いこの小説は、タイトル通り母親と息子のつながりを真っ直ぐに紡いだ物語。オカンの死期を悟ったボクが故郷から東京に呼び寄せ、ふたりで暮らす。ただそれだけのシンプルな内容であるにもかかわらず、「ひらかなで書かれた聖書」(久世光彦)などと絶賛され、多くの人を感涙させた。
脚本を手がけるのは俳優、監督として、映画フィールドでも活躍する日本を代表する演劇人、松尾スズキ。そしてメガホンをとるのは『バタアシ金魚』『きらきらひかる』『私たちが好きだったこと』と、これまでも名著を映画として昇華する誠実な手腕に定評がある松岡錠司。リリーと同年代である松尾と松岡のコラボレーションは、人間の生き死にを扱いながらも、劇的さよりも日常性、“終わること”よりも“終わらないこと”にまなざしを注ぎ、深く染み入る普遍性のある作品を完成させた。主演のオダギリジョーをして、「『ゆれる』に続き、またしても役者として大きな区切りを迎えた」と断言させる1作。どうかお見逃しなく。