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『天然コケッコー』について語り合いました
7月9日(月)スペースFS汐留(東京・新橋)18:00開場 18:30開映
ゲスト:山下敦弘監督
Evolution J film

 くらもちふさこの名作コミック『天然コケッコー』を、『ジョゼと虎と魚たち』の脚本家・渡辺あやとの初めてのコラボレーションで映画化した山下敦弘監督。これまで一度も同じ監督を迎えることのなかった“EJ”試写会だが、 52回目のこの日、同監督が初めて2度目の登壇したのは必然だったのかもしれない。新たなステージに挑んだ山下監督から貴重な制作秘話を聞くことができました。

「ラストシーンを思いついたときに自分がやる意味ができた気がした」

Q:原作の存在感が大きい作品で、しかも渡辺あやさんという脚本家と初めて組まれたわけですけど、その中で、自分の世界に持っていけそうだなって感じた部分はどこだったんでしょうか?
山下:今回は自分のクセを持ち込まないで、なるべく原作を忠実に映画化しようと思っていたんです。ただ、やっていくうちに、やっぱり僕がやる意味を探し出して。ラストの、(夏帆が演じるヒロインの)そよが教室に挨拶をしてカメラが一周すると……っていう、あれを思いついたときに、自分がやる意味ができたというか、これは映画でしかできないことだよなーって思ったんですよね。
Q:ひとつひとつのエピソードが並列的に描かれますが、連続性を保つためにどんな工夫を?
山下:この映画って、最終的には1人の女の子が中学を出るまでの話で、その中にいろいろなエピソードがあるんですけど、軸は恋愛に向かうまでの少女の気持ちですよね。でも、実は僕はそのことに撮影の途中まで気づいてなくて(笑)。夏のシーンの撮影のときは、僕は子供たちの分校の話だと思って撮ってるんですよ。で、夏が終わって、1ヵ月後の秋のシーンの撮影のときに、これはそよの話なんだって気づいた(笑)。だから、そこからは切り替えて夏帆に集中したんですけどね。
Q:原作があり、脚本の渡辺あやさんの厳しいチェックが入る中で、監督らしさをどのように出し、何をいちばん見せたいと思いましたか?
山下:実はラストシーンのひとつ手前に最初は卒業式のシーンがあったんです。で、あやさんはそれを絶対にやりたかったんですよ。だけど、シナリオを何回も読み直してみると、そこでひとつのクライマックスができて、その後のクライマックスの印象が薄くなってしまうような気がしたんですね。だから「卒業式のシーンは絶対になくしてくれ!」ってあやさんに言って、そこは頑なにシナリオから削ったんです。ただ、後で聞いたら、あやさんはそのときの僕が怖かったみたいなんですよね。そのとき初めて、あやさんは、僕が監督らしく見えたんじゃないかな?って思います(笑)。

7月28日(土)より公開 シネスイッチ銀座ほかにて公開 司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介

理屈や言葉ではなく“空気”を感じて観てほしい映画
 映画は、才能の集積です。まだ誰も見たことがないものを作り出すために、それを見るために、数多くの人間が束の間集い、地球で最初の、そして最後の宴を催します。閃光のような熱情、無から有を生み出す澄んだ馬鹿力、アマチュア精神とプロ根性がぶつかり合い、破格のスプラッシュが飛び散ることになります。それを、たとえば“奇跡”と呼んでも、まったく大げさではありません。『天然コケッコー』ほど、その“奇跡”を体感させてくれる日本映画は近年ありません。くらもちふさこの珠玉の名作漫画のエッセンスを、『ジョゼと虎と魚たち』の脚本家・渡辺あやが真空パックし、『リンダリンダリンダ』の監督・山下敦弘が映画ならではの表現でよみがえらせる。東京から転校してきた男の子の出現に、小さな田舎で暮らす女子中学生の脳内宇宙がカクセイします。理屈ではなく、哲学でもなく。大地に種が落ち芽が出て蕾がふくらみ花が開くように、彼女は“生を慈しむこと”を遺伝子のレベルで知覚します。  言葉や画で説明するのではなく、大気に漂う粒子を散りばめるように人間の情感のパレットを提示すること。その所作に触れるとき、これまでよりほんの少しだけまなざしのドアを開け、ちょっぴり心の窓を開けることができたなら、この映画は私たち観客にとっても「奇跡」になるでしょう。主演の夏帆と岡田将生の、永遠に朽ちることのない笑顔の記憶とともに。
text:相田冬二

観る者を幸福感に誘う田舎の日常風景
本作の重要な“登場人物のひとり”は、ロケ場所。原作漫画のモデルにもなった島根県の浜田市で長期にわたって撮影が行われましたが、従来の“古き良き田舎の風景”を大きく超越したこの土地独自の空気は観る者に、言い知れぬ多幸感を与えます。大らかにして繊細な、未知なる風土にくるまれるときめきを、どうかご期待ください。

監督:山下敦弘 脚本:渡辺あや 原作:くらもちふさこ 出演:夏帆/岡田将生/夏川結衣/佐藤浩市  配給:アスミック・エース
上映時間:2時間1分 7月下旬より、シネスイッチ銀座ほかにて公開


山下敦弘監督
Profile
1976年生まれ。『ばかのハコ船』('02年)『リアリズムの宿』('03年)などに見られる独特の空気が漂う演出は、国内外を問わず評価が高い。'05年に公開された『リンダリンダリンダ』が3ヵ月に及ぶロングランを記録するなど、日本映画界を担う監督として注目されている。
Message
この映画は奇抜な物語も派手なキャラクターもありません。とにかく2時間の間、田舎に流れるゆっくりとした時間を感じて楽しんでください。原作のファンの方はいろいろと思うところもあるでしょうが、僕を含めスタッフ、キャストが“映画でしか出来ない何か?”についてこだわって作りました。なので是非ともスクリーンで観てください!
©2007「天然コケッコー」製作委員会
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