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『クワイエットルームにようこそ』について語り合いました
10月12日(金)東京国際フォーラム(東京・有楽町)18:00開場〜
ゲスト:松尾スズキ監督
Evolution J film

芥川賞候補にもなった、自身の小説を映画化した松尾スズキの長編監督第2作『クワイエットルームにようこそ』。女性だけの閉鎖病棟に突然収容された女性ライターが、様々な問題を抱えた患者たちと出会い、非日常の中で自分と向き合っていく映画は笑いと狂気がいっぱい。この日のトークでは、病気のことや撮影秘話、映画に込めた監督の想いを聞くことができました。

「想像するしかないことを想像し続けることが僕は面白いと思う」

Q:精神病や精神病院の取材は簡単にはできないと思いますが、そのような情報はどういう形で入手したんですか?
松尾:取材はさすがにできませんでしたけど、医療アドバイザーの方にいろいろ聞きましたね。
Q:小説のときもリサーチしなかったんですか?
松尾:そういう人って伝えたいことがあるらしく、ブログをやってる方が多いんです。どうやって撮ったのか分からないけど、写真も載ってて、情報は取り放題(笑)。助かりましたね。その中から出来上がったキャラクターもありますね。
Q:閉鎖病棟に収容される、内田有紀さんの演じられたヒロインをフリーライターにしたのは?
松尾:自分のうっとうしさと女子が向き合うとき、みたいな話で考えていたので、ライターにも署名をしない人と署名原稿を書く人がいますが、そのへんの微妙な、無署名から署名に向き合うことに象徴性を持たせたかったんです。それに僕はこういう仕事をしてるから、女性のライターと知り合うことも多いし、(根拠もなく)女性のライターはだいたい(映画のヒロインと同じ)28歳なんですよ(笑)。そういうサンプルになる人たちを総合しました。でも、お笑い好きのライターってあまりいないから、それをフックに、笑うしかない現実みたいな逆説的な意味合いも込めてみたんですけどね。
Q:(心の中が)分からない人、圧倒的他者みたいな人を出そうという意識はありましたか?
松尾:それはありました。それで言うと、(蒼井優が演じた摂食障害の)ミキちゃんも本当に分からない。だから彼女が最後に呟く言葉も、蒼井さんには「本当に狂っているのか? 狂ったふりをしているのか? 決めないで言ってほしい」って言いました。拒食の人って、あんなに痩せてるのにまだ痩せたがっているわけだからある程度病んでるわけだけど、そこには踏み込めないですよね。だから、想像するしかない。でも、想像するしかないことを想像し続けることが、僕は面白いと思っているんですよね。

シネマライズほかにて上映中 司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介

松尾スズキの松尾スズキたる所以が凝縮された長編映画第2作
 映画『クワイエットルームにようこそ』を観て強く感じるのは、映画監督・松尾スズキが演出家・松尾スズキと同様、やはり異形の者であるということだ。突如、閉鎖病棟に収容された「28歳・フリーライター・女性」の「普通とはなにか?」をめぐるヘヴィな物語を、監督・松尾スズキはミュージカル・シーンや幻想的な風景を織り交ぜて鮮やかに映像化する。前段のインタビューで、「方法論が固まらない」旨の発言をふたりの松尾スズキはしているが、結果として彼は方法論に還元されない、不条理と倫理と夢と現実が渾然一体となった、これまでに観たことのない映像作品を作り上げている。全編に流れるのは、どくどくと脈打つ松尾スズキの“血”のようなもの。細部にまでその思想が行き届いた作品群は、映画、舞台の別を問わず、観客に返り血を浴びせるような心理的恐怖を常に与えている。  この映画の主人公・明日香は、おもしろコラムを書こうとして、最終的に自分がおもしろくない人間だということを発見してしまう。笑ってしまうようなこの皮肉こそ、松尾作品の真骨頂だろう。彼はここに、自身が実際に感じた「自分には何もないんじゃないか?」という怖れをそのまま投影している。もし、自分が何の才能もない普通の人間だとしたら。そんな素朴な問いかけをこのように視覚化してしまうところに、彼の異才たる所以があらわれている。
text:門間雄介

松尾センスが光るクセもの揃いのキャスティング

「映画における演出とは、つまりキャスティングである」という考えに貫かれた、豪華かつ実力派揃いの出演陣。硬軟自在の演技で役者としての本領を発揮した宮藤官九郎に、クセの強い登場人物を演じた蒼井優、りょう、大竹しのぶら個性派たち。
そして、彼らの時速160キロ級の演技をすべて受けきった内田有紀が、凛とした存在感を見せる。

原作・監督・脚本:松尾スズキ 出演:内田有紀/宮藤官九郎/蒼井優/りょう/妻夫木聡/大竹しのぶ
配給:アスミック・エース 上映時間:1時間58分 10月20日(土)より、シネマライズほかにて公開


松尾スズキ
Profile
'04年「恋の門」で長編監督デビュー。その後、短編「夜の舌先」(「Jam Films 3/female」内)や「ユメ十夜・第六夜」で着々と監督術を進化させ、長編2作目「クワイエットルームにようこそ」では、自身の原作を基にある女性の“普通探し”の過程をヘヴィに描く。
Message
思っていた以上に重い映画になったと思います。もっとコミカルになるのかなと、感じながら撮っていたんですが。でもこの重さは嫌な重さではないと思っています。お祭り的な『恋の門』とは違い、意図的にふざけるのを止めたので、いろいろな登場人物たちに感情移入できる映画になっているかなと。それが、みなさんに届けば嬉しいですね。
©2007『クワイエットルームにようこそ』フィルムパートナーズ
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