
青春映画というと、最近はどうも、スポーツや音楽などにみんなで一生懸命打ち込むものが多い。でも、実際の青春時代はもっとモヤモヤとした感情に支配されていたりする。古厩智之監督は、カタチにとらわれる監督が多い中、そんな繊細で複雑な感情をフィルムに定着させることにこだわり続けている若手の本格派だ。
PFFアワード'92グランプリに輝く『灼熱のドッジボール』で、主人公と転校して行く女子高生との淡い初恋と切ない別れを、最後のドッジボールの球の交換で鮮やかに描写。長澤まさみ主演の『ロボコン』(03)では、ロボットコンテストを通して、落ちこぼれ高校生たちのバラバラだった心がひとつになっていく様をスクリーンに浮かび上がらせてみせた。
高校駅伝をモチーフに描く最新作『奈緒子』でも、「言葉にならない感情を描きたいから映画をやっている」と公言する古厩監督のまなざしは変わらない。映画は、幼いころの事故が原因でできたヒロインと天才高校生ランナーとの深い溝、駅伝部員たちの苛立ちと不協和音の変化をじっくり見つめていく。そこには、これまでの作品と同様、説明的な台詞は一切ない。あるのは“走る”行為と仲間にタスキを繋ごうとする強い“意志”。上野樹里や三浦春馬らがその肉体で伝える嘘のない感情、揺れ動く距離感が、誰もがかつて経験したであろう、ほろ苦くもかけがえのないあの時間を作り上げている。