
手から手へ。手紙は、その名が示すように、「手渡される」メディアです。それはメディアというより、「伝達手段」と呼ぶほうがしっくりきます。コミュニケーションツールではなく、人と人との関係性を紡ぐ「絆」のひとつのあり方なのです。
ケータイやパソコンによるメールが一般化されている現在ほど、手紙の独自性を発揮できる時代はないかもしれません。もちろんメールにも心はこもります。ただ、肉筆でしたためた手紙からは、確かなぬくもり、その人自身の人間性がダイレクトに、優しく、真っ直ぐに伝わってきます。
『ポストマン』はタイトル通り、郵便配達員が主人公の映画。自転車配達に意固地にこだわる、昔気質のこの“郵便屋さん”は2年前妻に先立たれ、娘と息子を男手ひとつで懸命に育ててきました。しかし一本気な姿勢が災いして、受験を控え多感な時期を送る娘とはギクシャクしっぱなし。思うように気持ちを通い合わせられない父娘を軸に、手紙をめぐる様々なドラマが繰り広げられます。
監督は、ドラマ・ファンの間で「伝説」として語り継がれる名作『イグアナの娘』を手がけた今井和久。心と心を結ぶ手紙のようにシンプルで、すがすがしい一編に仕上げています。
どこか素直に自分をさらけ出すことが必要な手紙は、書くことに勇気を必要とします。でも、本作を観終えたとき、私たちはきっと大切な誰かに手紙を書きたくなるはずです。