
あなたは、『接吻』というタイトルを耳にして、どんな映画をイメージしますか。甘い映画。せつない映画。身も心もとろけるような映画。激しい映画。溺れる映画。運命の映画。宿命の映画……。きっと、様々なイメージが頭の中で飛び交うでしょう。けれどもどんな想像も、この映画の前では、きっと裏切られます。
見ず知らずの一家3人を惨殺した男が、テレビ越しに微笑みかける。自らカメラの前で逮捕されることを選んだ彼の深層に“触れた”ひとりの女が、苛烈なシンパシーに駆られ、その男を追いかけていきます。
はたして、それを、恋愛と呼んでいいものかどうか、劇中に登場する男の弁護士同様、私たちは考えることになります。これは一風変わった片思いなのだ、と言い切ってよいものかどうか、悩みはじめます。そして、人間の感情の蓄積と発露というものを、理屈やら言語やらで解釈することが、本当に可能かどうか、自分自身に問いかけざるをえなくなります。
なぜ私たちは物語を読むのか。なぜ私たちは映画を観るのか。なぜ私たちは物語に魅了されるのか。なぜ、私たちは映画を凝視するのか。そのすべてに答える恐るべき一作です。
かつて『UNLOVED』でも愛の可能性と不可能性を果敢に提示してみせた万田邦敏監督が、私たちひとりひとりの感覚を狂おしいほどにS試すR究極の体験。'08年、屈指のモニュメントとなること必至です。