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『接吻』について語り合いました
3月6日(木)スペースFS汐留(東京・新橋)18:00開場〜
ゲスト:万田邦敏監督
Evolution J film

 ごく普通のOLが、偶然見たテレビ画面のなかでマスコミにもみくちゃにされている殺人鬼にひと目惚れしてしまう……そんな、衝撃的ながら純粋な愛を紡ぎ上げた身震いするほど狂おしい究極のラブ・ストーリー『接吻』。万田邦敏監督を招いたこの日のトークでは、道徳的な葛藤すら完全に超越したその強靭な“愛のカタチ”をめぐって、さまざまな質問が飛び交いました。

「映画では意味がわかったから何かがわかったと思うのはやめましょう」

Q:小池栄子さんに「遠藤京子」の役を依頼されたとき、小池さんの反応はいかがでしたか?
万田:最初は「私にはできない」って断わられたんです。「京子を好きになれない。わからない。なぜ私にこの役を?」って。まぁ、普通好きにならないですよね。でも、小池さんもいろいろ考えてくださって、出演してくれたんです。
Q:時代が変わっても変わらない大切なものを伝えたいと思われたんですね。
長嶋:そうですね。デジタル化で便利になるのはいいことだと思うけど、その分大事なことを忘れているんじゃないかな? と勝手に思っていて。異常な事件も、ヘンな人間関係が影響して起きているんじゃないかな?って感じています。そんな時代に、人間力というか、愛情や友情、そういった大切なものをもう一回思い起こせるものができたら素晴らしいと思ったんです。
司会:最終的には、小池さんは京子が好きになったって言われてましたね。
万田:撮影が終わった後に「自分です。自分のなかにもある部分を持った人です」って言ってくださったのは嬉しかったですね。
Q:京子は、テレビのニュースで(豊川悦司が演じた殺人鬼の)坂口をひと目見て彼にのめり込みますが、そんなことはあるんでしょうか?
万田:そこに理由はないんですね。理由がなくていいと思いました。人と人が出会うとき“気が合うな”“この人とは全然ダメだな”ってことはあると思って。だから、この映画では理由付けは一切省く、ただ一瞬その人を見ただけで、“この人は私(と同じ)なんだ。私は今まで世界と繋がっていなかったけど、この人との回路の中で私は世界と繋がっていられるんだ”……そう彼女は思い込んだという設定にしました。
司会:小池さんは過去においてひとめ惚れしかしたことないんですって。運命を勝手に感じちゃうんですって。そこにはたぶん理由はないけど、確かにそういう人は存在しているんです。
Q:映画の最後の方で京子がする“接吻”にはどんな意味があるんでしょう?
万田:京子にとっては意味のあることだったと思いますが、接吻をした瞬間には彼女もつかめてなかったのかもしれない。でも、それ以前に、映画においては意味がわかったから何かがわかったと思うのはやめましょうよっていう気持ちが僕の中にあるのかな。映画を観ることによって起こる心の変化はある種不誠実であっていいというか、何もその全部が正解じゃなくてもいいんじゃないかなって思ってるんですよね。

ユーロスペースにて公開 司会:相田冬二
文:イソガイマサト
PHOTO:星野洋介

どんな期待も裏切る!万田邦敏が仕掛けた“究極の体験”
 あなたは、『接吻』というタイトルを耳にして、どんな映画をイメージしますか。甘い映画。せつない映画。身も心もとろけるような映画。激しい映画。溺れる映画。運命の映画。宿命の映画……。きっと、様々なイメージが頭の中で飛び交うでしょう。けれどもどんな想像も、この映画の前では、きっと裏切られます。
 見ず知らずの一家3人を惨殺した男が、テレビ越しに微笑みかける。自らカメラの前で逮捕されることを選んだ彼の深層に“触れた”ひとりの女が、苛烈なシンパシーに駆られ、その男を追いかけていきます。
 はたして、それを、恋愛と呼んでいいものかどうか、劇中に登場する男の弁護士同様、私たちは考えることになります。これは一風変わった片思いなのだ、と言い切ってよいものかどうか、悩みはじめます。そして、人間の感情の蓄積と発露というものを、理屈やら言語やらで解釈することが、本当に可能かどうか、自分自身に問いかけざるをえなくなります。
 なぜ私たちは物語を読むのか。なぜ私たちは映画を観るのか。なぜ私たちは物語に魅了されるのか。なぜ、私たちは映画を凝視するのか。そのすべてに答える恐るべき一作です。
 かつて『UNLOVED』でも愛の可能性と不可能性を果敢に提示してみせた万田邦敏監督が、私たちひとりひとりの感覚を狂おしいほどにS試すR究極の体験。'08年、屈指のモニュメントとなること必至です。
text:相田冬二

凄まじい存在感を放つ
小池栄子の演技に注目!

ヒロインの精神を、全身で体現した小池栄子の比類なき演技には誰もが目を見張るはずです。安易な感情移入を拒む圧倒的な主人公像でありながら、観る者の視線を揺さぶり、まなざしを傾斜させ、心を捉えて離れなくさせる、凄まじいばかりの存在感。どんな映画でも見たことのなかったその表情の連打に、必ずや打ちのめされます!


監督/脚本:万田邦敏 脚本:万田珠実 出演:小池栄子/豊川悦司/仲村トオル/篠田三郎
配給:ファントム・フィルム 上映時間:1時間48分 3月8日(土)より、ユーロスペースにて公開



万田邦敏
Profile
'56年、東京都生まれ。大学在学中、同じサークルに在籍していた黒沢清らと共に映像製作を始め、'96年に『宇宙貨物船レムナント6』で監督デビュー。'02年に発表した『UNLOVED』がカンヌ映画祭に出品され高い評価を得た。現在は映画監督のほか大学教授としての顔も持つ。
Message
妻が脚本を書き上げてから3年半、完成から2年。スタッフもキャストも、首を長くして『接吻』公開の日を待ち望んできました。私自身は、小池栄子さんの素晴らしさを一刻も早く皆さんに観て頂きたく、歯がみする思いを続けてきました。この映画には、まだ誰も知らない小池栄子が出てきます。どうかそのことに、驚いて頂きたいと思います。
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