
吉田恵輔という監督が、日本映画の今後を背負って立つ逸材でありながら、いまだ才能に見合う知名度を獲得していない現状は、映画にたずさわる者みんなの怠慢だろう。大袈裟に聞こえるのは百も承知。疑うなら、レンタル屋に走って吉田監督の長編デビュー作『机のなかみ』を借りて欲しい。青春や恋愛のどうしようもないそのまんまを、いささかも美化することなく描き出した「恐るべき才能」を目にするはずだ。
リアルでサイテーだけど笑えて泣ける……。そんな持ち味はそのままに、さらなるエッジを期待するわれわれの一歩も二歩も先を行ったのが、待望の第2作『純喫茶磯辺』だ。トリッキーな構成で観客をうならせた『机のなかみ』と違って、今回の語り口はオーソドックスなファミリードラマ。才気をアピールする小技は敢えて封印し、万人に開かれた堂々たる「いい映画」に仕上げている。
もちろん監督独特の毒の効いた笑いや、ダメ人間に寄せる深い愛着は本作でも健在。そこに得意のエロネタを注ぐことで、センセーショナルな問題作をものにすることもできたはず。しかしそんな山っ気よりも、愚かだけどウソのないキャラクターと彼らが暮らす日常の空気がみごとに息づいている。愛すべきと呼ぶには辛らつで、感動を煽り立てる派手なクライマックスもないけれど、信頼に値する「現代の人情喜劇」を確かに吉田監督は紡いでいるのだ!